動物社会学研究会のご案内

2025年2月6日

  • 研究会(2024年度)

第12回 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第12回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2025年2月8日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟第10講義室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

イソギンチャクが豊富な環境におけるクマノミの社会構造と個体間相互作用 小林優也(D3)

動物の中には集団を形成して生活し、他個体に対して協力的に振る舞う種がいる。集団のメンバーが非血縁者で構成される場合、捕食圧などの理由から集団から離れて生存できないといった強い生態的制約や、上位個体による繁殖機会の独占といった強い社会的制約が、協力的な社会集団の出現要因だと考えられている。これらの制約の強さは、繁殖資源や生息地の質によって変動し、集団の社会構造や維持機構を変化させると予測されるが、実際に検証した例はほとんどない。クマノミ亜科魚類は非血縁者による集団で生活し、体サイズに基づく厳格な順位制に従う。また、繁殖個体は上位2個体のみで、最大個体が雌、2番目が雄となる。しかし、これまでの調査から、クマノミAmphiprion clarkiiの一部の雌は異なるイソギンチャクにいる複数の雄を訪れる一方で、一夫一妻の婚姻形態は保たれることが分かった。そこで、イソギンチャクの豊富さがクマノミの社会構造に与える影響を明らかにするとともに、非繁殖雄の集団内における役割に焦点を当て、各個体の行動を評価した。通常の一夫一妻に比べて、一妻多夫的な行動を示す雌は、多数のイソギンチャクと未成熟個体を囲っていた。また、一妻多夫的な行動を示す雌は、自身よりも大きな雄と繁殖する傾向にあった。雌と繁殖雄は卵保護や対捕食者防御など協力的な行動を頻繁に行っていた。一方で、非繁殖雄は協力的な行動を示さず、雌に対して劣位行動を多く行っていた。以上から、イソギンチャクの豊富さは順位制の緩和をもたらすこと、多数のイソギンチャクを保有する雌は非繁殖雄に社会的圧力を与え、非繁殖雄は服従的に振る舞うことで集団内に留まり繁殖機会を待つことが示唆された。

高い生物多様性を持つ沿岸水域における海洋哺乳類への騒音影響を軽減するための海洋時空間計画の可能性 赤松友成(ゲスト:早稲田ナノ・ライフ創新研究機構)

温暖な沿岸海域には、多くの脆弱な種が生息しています。一方で、洋上風力発電や海運など海洋の経済的利用圧力が増しています。なかでも海中騒音の海洋生物への影響が国際的に懸念されています。

日本にはまだ海洋空間計画が存在しませんが、もし海洋空間計画がすべての脆弱な種の生息地を除外してしまうと、海洋開発のための空間が残らない可能性があります。水中の音響環境は、日中や季節によって変化し、音源からのノイズがどれだけ遠くまで知覚されるかが、マスキングレベルに応じて変わります。このような状況では、空間計画と併せて、ノイズの時間的な管理を検討すべきです。

たとえば春になると、日本海の沿岸水域に小型のハクジラ類が出現しますが、この地域では多くの洋上風力発電プロジェクトが進行中です。ソフトスタートによる杭打ち作業や、海洋哺乳類を対象とした視覚および音響監視を実施することは、効果的な戦略となり得ます。スナメリは夜行性の活動パターンを示している海域もあり、日中に建設や運搬を行うことで、ノイズ曝露を軽減するための共有解決策となる可能性があります。海洋音響学会は2021年に「海中音の計測手法・評価手法のガイダンス」を発表し、人工ノイズが点音源から到達し計測可能な最大有効距離を特定するために、マスキング要因である背景ノイズを長期的に監視することを推奨しています。

海洋空間計画に加えて、時間計画は海洋資源と生物多様性を持続可能に管理する上で重要な役割を果たします。マイクロプラスチックや窒素酸化物(NOx)などの他の汚染物質とは異なり、ノイズは発生源が停止すれば消散します。人為的なノイズ源は管理可能です。脆弱な種の時間的な出現パターンを考慮し、ノイズ曝露のための妥協可能な時間枠を設定することは、実現可能な対策です。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

森(研究会渉外担当) a20se029★st.osaka-cu.ac.jp
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