動物社会学研究会のご案内

2025年3月5日

  • 研究会(2024年度)

第15回(最終回) 大阪公立大学 動物社会学研究会のお知らせ

第15回 大阪公立大学 動物社会学研究会は以下の内容で開催いたします。

外部の方もオンラインから参加可能です。皆様のご参加をお待ちしております。

開催概要

日時: 2025年3月8日(土) 13:00-16:00
(発表および質疑応答の進行に応じて前後する場合がございます)

場所: 大阪公立大学 理学部E棟第10講義室
(外部の方はオンラインにて参加いただけます。お手数ですが、詳細はこちらの共通連絡先へお尋ねください)

発表内容

協同繁殖魚Julidochromis ornatusのサイズヒエラルキー社会 安房田 智司(教授)

東アフリカ・タンガニイカ湖固有のカワスズメ科魚類は、婚姻形態と子育てが最も多様化した魚類の一つで、その多様性と進化の研究はヒトを含めた高等脊椎動物の社会を理解する上で極めて重要である。また、私たちが進めている「認知進化生態学」研究のモデルでもある。本科魚類は、魚類では珍しく稚魚が大きくなるまで子育てするため、婚姻形態と子育ての関係は鳥類と良く類似している。実際、鳥類で良く見られる協同繁殖もタンガニイカ湖産魚類で発見された。Julidochromis属は協同繁殖の中でも共同的一妻多夫型で配偶する珍しい魚類の一つで、最大サイズが雌である、性役割が逆転する場合がある、一夫一妻でも繁殖するなど、カワスズメ科魚類でも珍しい特徴を持つ。さらに、Julidochromis属はサイズヒエラルキー社会を持ち、共同的一妻多夫であっても一夫一妻であってもサイズ差(サイズ比)が繁殖するメンバーで一定に保たれている。この特徴は、体サイズが力関係に影響する動物全般に当てはまり、クマノミでもサイズによるグループ内の順位が社会の維持に重要であることが示されている。本発表では、Julidochromis ornatusのサイズ差(サイズ比)を詳細に検討するとともに、順位、成長、繁殖、個体の入れ替わり、個体間のaggressionsubmissionから、本種のサイズヒエラルキー社会の維持機構について考えてみたい。

群集生態学・マクロ生態学における性の役割 鈴木紀之(ゲスト: 高知大学農林海洋科学部・准教授)

性淘汰や性的対立、性の維持に関する問題は、進化生物学で盛んに研究されてきた。その一方で、個体群や群集といった高次の生態現象では、性を考慮せずに単純化して分析するのが普通である。しかし、性差や雌雄間の相互作用を明示的に扱うことで、群集生態学さらにはマクロ生態学についての理解が進む可能性がある。そこで本発表では、「繁殖干渉によるニッチ分割」および「性依存的な多様性効果」の2つのトピックについて紹介する。繁殖干渉は種内の性的対立の副産物として捉えることができ、捕食性テントウムシ近縁2種を対象に進めてきた一連の成果と、マングローブに特異的に生息するスペシャリストの昆虫の生態について紹介する。また、色彩多型をはじめとした集団内の表現型の多様性は、集団の安定性・種の分布・絶滅リスクといった高次の生態現象にも波及することが近年指摘されているが、その例外もある。私の研究では、チョウとガを対象にした種間比較をもとに、こうした多様性効果が性依存的であることを主張する。これらの研究は、行動生態学・進化生物学で蓄積された知見が他の階層の生態学に貢献できることを示唆している。

過去の研究会の発表者と発表要旨

過去の研究会の発表者と発表要旨はこちらからご覧下さい。

連絡先

森(研究会渉外担当) a20se029★st.osaka-cu.ac.jp
★を@マークに変えて送信してください。