食事で疲れをとる
科学的に検証された抗疲労に効く栄養素
疲れを解消するには、細胞やたんぱく質を傷つける活性酸素の発生を抑え、代謝を助ける栄養を取って疲労回復システムを修復することが必要です。スムーズに稼働すれば、疲れにくくなり、過労予防になります。
ビタミンB₁・・・代謝のサポート
ごはんやパンなどの炭水化物は、呼吸から取り入れた酸素を使ってエネルギーとなります。その過程で、ビタミンB₁が不足すると、どんなに炭水化物を食べてもエネルギーに変えることができません。
α - リポ酸・・・代謝のサポート、活性酸素を防ぐ
α - リポ酸はビタミン様物質で、炭水化物の代謝を促進させるほかに、活性酸素を防ぐ抗酸化作用があります。少なくなると、糖がエネルギーとして代謝されず、肥満の原因にもなります。抗酸化作用はビタミンCやEの数百倍もあるとされ、抗疲労の強力な助っ人です。
L - カルニチン・・・分解物をエネルギー回路に運ぶ
L - カルニチンは脂肪燃焼系アミノ酸で、エネルギー工場のミトコンドリア膜を通過するために必要な物質です。糖質や脂肪からエネルギーを算出する器官で、分子の大きな脂肪酸はそのまま通過できず、L - カルニチンと結合して初めて通ることができます。仔羊やかつお、赤貝などに多く含まれています。
クエン酸・・・TCA回路(クエン酸サイクル)をスムーズに動かす
人には体を動かすためのエネルギーを作るシステムが備わっています。TCA回路と呼ばれるもので、細胞の中にあるミトコンドリアによって酸素を使って行われ、エネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)が作られます。この回路がうまく回らないと、さびついて効率よくエネルギーを作り出せません。
そこで、強い味方になってくれるのがクエン酸。酢や柑橘類に多く含まれている成分で、滞った回路の動きをスムーズにする「はね車」の役割をしてくれます。
コエンザイムQ10(CoQ10)・・・栄養をエネルギーに変える
コエンザイムQ10は、栄養素から大量のATPに変えてくれます。人の体に含まれている補酵素ですが、加齢とともに減少します。不足するとエネルギーの算出に支障が出るので、食べ物から補うことが大切です。
また抗酸化作用を持ち、細胞膜の参加を防ぎ、酸素の利用効果を高めます。
イミダゾールジペプチド・・・活性酸素を除去する
イミダゾールジペプチドは、人や動物の骨格筋にある2つのアミノ酸総結合体で、渡り鳥が長時間翼を休めず飛び続ける原動力になっています。鶏の胸肉などに多く含まれ、私たちの研究から強い抗酸化作用と疲労を軽減する効果を実証しました。
この他、下記も抗疲労に大切な栄養素です
イノシトール
柑橘類に含まれ、細胞膜を構成するリン脂質の大切な成分です。
ビタミンB₆
タンパク質からつくられるアミノ酸をエネルギーに変えます。細胞を活性化するのに大切な栄養素です。
トリプトファン・チロシン
神経伝達物質をつくるアミノ酸で、抗疲労に不可欠です。
活性酸素の発生を抑え、代謝をよくするカギは毎日の食事です。
抗疲労に有効な栄養素をバランスよくとり入れましょう!
上手な食材選びで疲労と老化の加速にストップ
疲労も老化も、悪玉である活性酸素によって引き起こされます。メカニズムは同じですが、活性酸素が細胞を酸化させ、一時的に傷つけてしまうのが疲労、細胞の傷を残したままにしているのが老化です。疲労を解消しないままいつまでもひきずっていると、さらに細胞が傷ついてしまい、老化を加速させることになってしまいます。若い人でも疲れを蓄積している人は、男女に限らず年齢より老けてみえることがあります。これは、老化が進んで細胞がさびついたり、壊れているためです。
こうならないために、とにかく代謝をよくして細胞を活性化させ、疲れをとりましょう。ここまでお読みになったみなさんは、疲労のメカニズムや抗疲労に役立つ栄養素を知ったはずです。あとは食材を選ぶだけです。
食べ物には必ず、栄養素が含まれており、どれもが健康な体をつくる源になっています。三大栄養素と呼ばれているタンパク質、脂質、炭水化物は、ビタミンやミネラルによってスムーズに働いています。このため、これらは総じて五大栄養素と呼ばれています。これらに前にご紹介した抗疲労に有効な栄養素をバランスよくプラスしてください。
栄養素について知ることで、適切な食材を日常の食事にとり入れて、疲労と老化の加速にストップをかけることができるのです。
疲労に対抗できる栄養をバランスよく
疲労の原因である活性酸素の害から体をまもるには、抗酸化物質を十分にとる必要があります。 ビタミンB1(うなぎ、かつおなど)、α-リポ酸(じゃがいも、トマトなど)、パントテン酸(豚のレバーや子持ちかれいなど)、L-カルニチン(ラム肉、かつおなど)、クエン酸(レモン、グレープフルーツなど)、CoQ10(牛乳、いわしなど)、イミダゾールジペプチド(かつお、まぐろ、鶏胸肉など)はどれも抗酸化作用があります。
ただし、一つの栄養素だけで効果があるというものではありません。栄養素は単独で役割を果たすのではなく、それぞれがお互いに助け合ったり、影響し合ってパワーを発揮します。一つの栄養素に限らず、抗疲労に有効な栄養素を色々と組み合わせて、バランスよくとりましょう。
また、体の構成に欠かせない肉や大豆などに含まれるタンパク質は、毎日欠かさずにとるようにこころがけてください。代謝に不可欠な酵素や免疫の抗体なども、タンパク質が主材料になっています。エネルギー源としても大切です。動物性、植物性のタンパク質をバランスよくとりましょう。
疲れに効く主な食材
私たちが普段食べている食品に、抗疲労に効く栄養素が含まれたものが意外と多くあります。
忙しい毎日でも、疲れを防ぐ栄養素の食材を意識して食事に取り入れてみてください。
※スーパーで購入できる食材例です