植物病理学研究グループ
植物病理学は、植物の病気の防除を最終目標とした、基礎研究と応用研究の両方を含む総合科学です。私たちは、特に防除が難しい土壌伝染性糸状菌と植物ウイルスによる病害の防除を目指しています。そのために、病原微生物の形態や遺伝子塩基配列による同定と分類、病原体の生態や進化の解析、菌間寄生菌や発病抑止土壌による生物防除の開発などを行っています。さらに、発病メカニズムの研究や病原微生物の有効利用に関する研究も行っています。それらの研究をとおして未来の植物医師を育成します。
植物病理学とは
私たち人間がときどき胃腸炎やインフルエンザに罹るように、草花や野菜、樹木などの植物も病気になります。このような植物の病気を対象とした科学が植物病理学です。
植物病理学は農学の一部門を担い、農作物や園芸作物、林木などの有用植物を病気から守り、品質が良く十分な量の収穫をもたらすことによって人間社会に貢献することを主な目的として発展してきました。今後,人口がさらに増加して世界的な食糧不足が予測されている中、植物に病気が発生する原理を追求し、植物を病気から保護するための技術を創り出す植物病理学はさらに重要になってきます。
植物病と万葉集
植物病にまつわる余談です。
「この里は継ぎて霜や置く夏の野に わが見し草はもみちたりけり」(孝謙天皇、万葉集より)
万葉集に孝謙天皇が詠んだ詩が収録されています。孝謙天皇が夏に色づいたヒヨドリバナ見て詠んだこの詩は、ヒヨドリバナの植物ウイルス病を表しており、現在のところ世界で最も古い植物ウイルスの記録であるとされています。